女子高生はスイーツもそうだし、韓国ブームとか結構ガッツリ系を食べてる
ーー舞台に横浜を選んだのはなぜですか?
Akeo:こんなこと言うと元も子もないんですけど、横浜ってなんかおしゃれな雰囲気があるじゃないですか(笑)。今回は「想い出の地巡り」っていうのがあって、個人的に横浜に思い入れがあって登場人物たちとリンクして書けるんじゃないかっていうのはありました。
実は『FATAL TWELVE』のラストにも横浜のカットが出てくるんですけど、そのときから横浜の物語を作りたいなと思っていて。前作の終わりの場所が今作のはじまりの場所になるっていう流れで作りました。
塩こうじ:私は出身が田舎のほうなんですけど、横浜って印象的だし、みなとみらいとかかっこいいなって思ってました。映える場所も多いし、水辺とかもあって絵的にも良かったです。


ーー中華街のシーンではおいしそうな食べ物が出てきますよね。深夜にプレイしていたら『大鶏排(ダージーパイ、台湾から揚げ)』が出てきて、なんだろうと思って検索したら、お腹が鳴りました……。
Akeo:その言葉が聞けただけでも良かったです(笑)。取材に行ったときに、キャラクターたちと同年代の女の子がデカいのをハムハムしてたりとかして。塩こうじさんもよく言ってるけど、女子高生はスイーツもそうだし、韓国ブームとか結構ガッツリ系を食べてる。
塩こうじ:数年前から女子高生が帰り道にどこ行く?しゃぶしゃぶ!みたいな流れがはじまっていて、めっちゃお肉食べるなという印象がありますね。資料集めにTikTokとかInstagramとか使ってるんですけど、大鶏排とかチーズタッカルビとか濃い目のものをいっぱい食べてるなと。現地に行っても女の子が大鶏排持って食べてたり、小籠包を食べてる子も多かったですね。


ーー担々麺はどうですか?
Akeo:あれはフィクションです……。おしゃれな女の子がおしゃれなカフェに行くっていうのもいいんですけど、少しリアルな世界観を目指したときにはお肉も食べるし、麺も食べるだろうと。
塩こうじ:フィクションでも”っぽさ”はあるかなーと思います。甘いものも食べるし、揚げ物も食べるし、自分が高校生のころを思い返してもめっちゃご飯食べてたなって。
Akeo:2人とも食べるのが好きだから、ご飯の描写が多いっていうのはありますね。今回は栞里のキャラクター設定でもお腹が空きやすい、飢えているっていうのが重要な要素にもなっているので、印象付けたいっていうのもあります。
自分で決めて、前に歩いていくところ、それはすごく重視しました
ーー『嘘から始まる恋の夏』で描かれるのは恋愛だけではありませんよね。一度壊れてしまった親子関係の再構築や薫と栞里の自立がテーマになっていると感じました。考えていたテーマを教えて頂けますか?
Akeo:企画書には「自己選択」ってワードがあって、「自立」と同義でもあると思います。とにかく自分で決めて、前に歩いていくところ。それはすごく重視しましたし、大きなテーマのひとつです。
もうひとつのテーマとして「ノスタルジー」があります。今作で描かれているような青春を過ごしていないはずなのに、なぜか懐かしく感じる。そういうふうに思ってもらえればいいなと。ノスタルジーを感じつつ、現実を生きてくれたらいいなと思っています。
塩こうじ:根幹のテーマみたいなものはジャンルと相性が悪くないか、暗すぎないかとかそういうのがなければAkeoさんの感性におまかせって感じですね。モラル的に問題があったり、百合とか恋愛を扱うなかで、これはないだろうということがなければ。おもしろければオールOKです。
Akeo:怖すぎる!
塩こうじ:だって私はおもしろいものはジャンル関係なく好きだから。そのなかに私が描きたいやつを入れてね、それでおもしろいもの書いてねって結構めちゃくちゃなことを言ってます。Akeoさんが書くなら絶対おもしろくなるだろう思っているので。
ーー親子の関係が描かれるシーンが多いですが、親子についてしっかり書こうと思ったのはなぜですか?
Akeo:自己選択とかノスタルジーというテーマを書くなかで、刹那を生きてるだけの子にはしたくなかったんですね。この子たちは親に守られてる、そういう世界のなかだけで生きているって思ってほしくなくて。
自分の道を生きていくんだ、好きなことで生きていくんだって決めることって、親となにかの決着だったり、和解だったりをしなきゃいけないときってあると思うんですね。この子たちの成長を描いていく、居場所を見つけていくというなかでは、やっぱり親子関係は外せないテーマだったのかなと思います。


オファーを受けてもらえなかったら終わるなってぐらいの気持ちでいました
ーー「やっぱ」「じゃあ、行こ」など、リアルな言葉遣いからはこだわりを感じました。
Akeo:声に出して読みたい日本語って言うと変ですけど、演じてくださるのが素敵な声優さんたちっていうのもあって、ゲームらしいかわいさも活かしつつ、少しでもリアルを追求したいと思いました。
作品を遊んでいるときは自分という存在を消したいというのがあって、誰かが書いたものというよりは、この子たちがしゃべってるんだと感じてほしい。そういう意味では気をつかったところではあります。
ーーボイスがキャラクターのイメージにぴったりだなと思いました。声優さんはどういう基準で選考されたのでしょうか?
Akeo:塩こうじさんと相談しつつ、音響会社さんにこういうキャラクターがいるんですけどって相談して紹介して頂いたり、自分たちの知識のなかでこの人がぴったりだと思った人がいたら、交渉してもらったりという感じですね。
実は自分の中で一番最初に決まっていたのは、松井恵理子さんです。前作を作った段階で松井恵理子さんと次にお仕事をするときはこういうキャラクターを作りたいなというのがずっとありました。それが霜月深玲なんですが、もうこの人しかいないってキャラクターの作り方だったので、もうオファーを受けてもらえなかったら終わるなってぐらいの気持ちでいました。


塩こうじ:自分としては素の声質がキャラクターに合っているのがいいなっていうのがこだわりポイントですね。演技とかニュアンスはAkeoさんがピンとくる方がいいんじゃないかなと。
Akeo:演技してる声だけじゃなく、ナレーションの声だったり、ラジオの声を聞いたりというのはやってますね。じっくり選びました。
ーー父親の2人はいかがですか?
塩こうじ:音響会社さんからどういう方がいいか教えて頂いたんですけど、逆の候補で送られてきて、こっちがこっちじゃない?みたいな感じで。
Akeo:栞里パパの方は薫パパの方が合うんじゃない?とかそういう感じだったよね。
ーー薫のお父さんはかっこよくて好きです。
Akeo:良い仕事してくださってるんですよね。男性キャラクターの2人も。2人とも推したい。薫パパはダンディな声でちょっと三枚目もできるという、良いですよね。理想のお父さんかもしれない。栞里のお父さんは……本編を見てほしいです。



