『夜半に道連れ』は女性ふたりの特別な感情にフォーカスを当てたノベルゲームだ。
ふたりの女性が協力して、ひとりの男性を殺して埋める。冒頭の暴力的な描写にインパクトがあるが、「死体を埋める」ことよりも、その結果として敵対するはずの女性ふたりの間に生まれる絆が主題だ。決して楽しい物語ではないが、ツラさのなかに一縷の希望を見いだす話でもある。
本記事では『夜半に道連れ』をレビューしていく。
あらすじ
あさひは恋人が既婚者だったと知り、殺意を抱いて恋人の家に向かった。
返り討ちに遭い、死を意識する中、恋人が突然倒れて死んでしまう。困惑するあさひだったが、相手の配偶者・佐枝子に助けてもらったことに気づく。
自首しようとする佐枝子に、あさひは遺体を埋めることを提案し、ふたりで山へと向かう。
ふたりがもっと早く出会っていれば……残酷な運命のいたずら
死体埋め百合と聞くと身構えてしまうが、シチュエーションとしては知られたものだ。共犯者として秘密を共有することで、連帯感が強まり、ふたりが距離が縮まるきっかけとなる。最近完結した百合漫画『奈落の花園』も記憶に新しい。
『夜半に道連れ』は死体を埋めた後からはじまる。舞台は帰りの車中だ。
ストーリーはふたりの会話を中心に進む。雰囲気はおだやかだ。会話のなかでそれぞれの過去や抱いていた思いが明らかになるにつれ、ふたりが共感しあえる存在なのだと分かってくる。
ふたりは人生のどん底にいて、読んでいて胸が苦しくなることばかりだ。そのなかで時折微笑むふたりを見ていると、やるせない。ふたりがもっと早く出会っていればと思わずにはいられない。
ビターなエンディングのなかに一縷の望みを見出したい
『夜半に道連れ』は選択肢によってエンディングが変わるマルチエンディングを採用している。エンディング数は3つだ。
エンディングにおいては犯してしまった罪とどう向き合うのかが重要になる。
殺されても仕方ないように思える存在であっても、やってしまったことはいつか償うことになる。選択肢によって”償い方“が決まる。
どの結末を迎えたとしても、ふたりを待ち受ける運命は残酷だ。読後に感じるのは苦みのある余韻だ。