『私たちマリアージュ①』は女学院を舞台にしたSF百合ビジュアルノベル。
百合専門サークルの
お嬢様学校に送り込まれたスパイ・
姉妹百合を中心にドラマチックなストーリーが描かれており、これからのシリーズに期待を抱かせる作品であった。
本記事では『私たちマリアージュ①』のあらすじ、登場人物を紹介した後、ゲーム内容をレビューしていく。
あらすじ
聖リアンヌ女学院にスパイとして送り込まれた星野
星
。
転入早々、行われた儀式で星は
ひっそりと任を果たす
夜、自室に戻り、ARディスプレイを使って図書室に向かおうとした星は聖堂に飛ばされてしまう。
辿り着いた先は1年前、まだ転入する前の学院であった。混乱するなかで
キャラクター紹介(声優)
星野 星 (CV.花城かざり)
普通科1年に転入した”ある機関”のスパイ。
ハイテンションなドジっ子愛されキャラ。
鷺宮 近衛 (CV.岩本 紗依)
太極科2年、生徒会長。
軽いノリで距離を詰めてくる、女たらし。
鷺宮 ほまれ (CV.かの仔)
上級科1年、生徒会書記。
奔放な姉と対照的に落ち着いてる。
八田 媛 (CV.北大路 ゆき)
上級科2年。
食堂で星に声をかけ、星の学院のイロハを教えてくれる。お淑やかな女性。
斑鳩 ガルグイユ・リゼット (CV.秋山 はるる)
太極科2年、生徒会書記。
去年は生徒会長の座を巡って近衛と争った。冷静で聡明。
レビュー
SF・ミステリー・百合が絡み合うストーリーがおもしろい
『私たちマリアージュ①』のストーリーにはさまざまな要素が盛り込まれている。
物語の主軸
- SF:AR空間での数時間が現実では10分程度になる、突然タイムスリップするなど。
- ミステリー:謎に包まれた”機関”の存在、スパイとしての目的とそれぞれの思惑。
- 百合:鷺宮姉妹を中心として描かれる関係。
3つの要素が複雑に絡み合うストーリーだが、特に説明はない。
プレイヤーは会話を繰り返すうちに、学院の状況や特殊な設定を理解できるようになっている。
最初は固有名詞が多くて戸惑うかもしれないけど、読み進めるうちに分かるようになるよー
舞台設定がよく分からないのは主人公もプレイヤーも同じだ。主人公と同じタイミングで理解を深めていくところに一体感がある。
ディクショナリー(Tip’s)も有効活用され、世界観を壊さないように工夫がなされていた。
序盤で、ほまれから上級科1年だと挨拶される。その時点でプレイヤーは上級科が何を意味するのか分からない。
転入したとはいえ、おおよそのことは知っているはずの星
に対してほまれがわざわざ上級科の説明をするはずもない。
このような場合、会話のなかで強引に説明させるのではなく、ディクショナリー(Tip’s)へ誘導される。
ディクショナリーはキャラクターの会話やモノローグに織り交ぜにくい固有名詞の解説として機能しており、プレイヤーはいつでも内容を確認できる。説明的な会話をできるだけ無くし、ストーリーの進行をスムーズにしている。
ストーリーはさまざまな要素を詰め込み気味で、本作だけでは全容を理解することはできない。
序盤には戸惑いも感じたが、タイムスリップに絡んだ謎や姉妹の関係が変化していく展開がスピーディーで飽きさせない。気づけば4時間一気にプレイしていた。
4部作の第1章としての位置付けではあるが、投げっぱなしというわけではなく、主題である
はやく続きがやりたい!
深い愛情を描いた姉妹百合
『私たちマリアージュ①』の百合描写でメインとなるのは
破天荒な姉としっかり者の妹という図式ではじまるが、関係性は次第に変化していく。その過程でお互いへの深い愛情を感じさせるストーリーだ。
相手を思いやるためにひとりで問題を抱え込み、それぞれに疎外感を生まれる。姉妹の葛藤が切ない。
盛り上がってまいりました!
姉妹百合が好きな人におすすめね。
群像劇だが、主人公視点がメイン
『私たちマリアージュ①』は百合群像劇と銘打っており、星
以外の視点から物語が語られるシーンもある。
視点が切り替わるタイミングは会話の途中や会話が終わった後などさまざまだ。
相手の言葉をどう受け止めていたか、裏でどのようなことを考えているかを複数の視点で見せ、物語に深みを与えている。
ただ、これ一作だけで群像劇と呼ぶには、別視点でのボリュームが少なすぎる。もっと別キャラクターの視点での物語を読みたかった。
第二章では主人公が変わるらしい!
群像劇好きとしては、二作目以降のなかで全体として群像劇になっていくことを期待したい。
動く立ち絵と変化する会話ウィンドウ
『私たちマリアージュ①』の売りとされているのが2つの演出要素だ。
- Live2Dを用いた立ち絵アニメーション
- 会話ウィンドウの豊富な表示形式
Live2Dを用いた立ち絵アニメーション
まずはLive2Dによってキャラクターの立ち絵が動く演出。
目パチ、口パクはもとより、髪の揺れやキャラクター別のポージング(胸に手を当てる、手のひらをこちらに向けて振る)など動きの種類は豊富で、動く回数も多い。
キャラクターのアニメーションはセリフを補完する役割を担っており、たとえば、ほまれが姉について語るシーンでは、胸に手を当てながら話す姿に愛情と尊敬を感じる。
会話ウィンドウの豊富な表示形式
2つ目のポイントとして、会話ウィンドウの豊富な表示形式が挙げられる。
通常の会話ウィンドウ以外にモノローグで活用される雲のようなウィンドウ、漫画のような長方形の吹き出しなど、作中では状況に合わせてウィンドウの形を変えていく。
雲形のふきだしはちょっと読みにくかったな……。
漫画のモノローグのような長方形の吹き出しは2人の気持ちを同時に表すシーンと相性が良く、ストーリーの雰囲気を高めていた。
演出には気になる部分もあった。
作中のバトル演出は取ってつけた感があり、映像演出自体が不要だったのでは?と感じた。
場面描写はテキストだけでも良かったんじゃないかな?
演出の新しさが強調されているが、それによって物語に劇的な効果を与えているとは言えない。筆者としては演出よりもシナリオのおもしろさを評価したい。
ちょっと気になるバックログとSteam固有の問題
『私たちマリアージュ①』のシステム面は整理されていて、プレイしていて大きな不満はないが、少し気になるところもあった。
1つ目がバックログ。
過去の会話内容を確認しようとバックログを開くと、ベージュの背景色に白文字で表示されるため視認性が良くない。
2つ目がF12の設定。
これはSteam版特有の問題だが、キャラクターボイスの再生とSteamのスクリーンショットが同じF12に設定されているため、スクリーンショットするたびに音声がもう一度再生されてしまう。
筆者はSteam版でプレイかつ、スクリーンショットを大量に撮るタイプであるため、音声が繰り返し再生されていた。
Steam側の設定を変えればよいのだが、他のゲームとの兼ね合いもあるため、できればゲーム側で他のキーへの割り当て機能があるとよい。
パッケージ版の購入者やスクリーンショットを使わないSteamプレイヤーであれば問題ない。
バックログやUIは今後のアップデートで更新されるかも。
魅力がいっぱいのビジュアルとボイス
『私たちマリアージュ①』のキャラクターはかわいらしく、魅力的だ。
星野 星 、八田 媛 :珀石碧鷺宮 姉妹:とけし斑鳩 :卯蟹うか
声優の演技もキャラクターにハマっており、ビジュアルとボイス両面でキャラクターの個性を確立していた。
筆者のイチオシは
声優は北大路ゆきさん。百合ゲー界隈では『推しのラブより恋のラブ』の
ギャルの恋と八田先輩ではキャラクターが真逆だが、本作では可憐な演技で魅力的なキャラクターを作り上げている。
もっと八田先輩の出番をください!
4種類+αの制服もかわいい。
中等部、高等部(普通科、上級科、太極科)それぞれで制服が異なるうえ、太極科は1人1人制服が変わるため、いろいろな制服が楽しめる。
筆者のイチオシは上級科の制服。アシンメトリーのデザインがカッコよく、白にグリーンのリボンが爽やかでいい。
中等部の制服も捨てがたいね。
キャラクターの私服もそれぞれの個性に合わせて選ばれており、衣装へのこだわりを感じさせる。
キャラクター、衣装どちらも優れており、ビジュアルのクオリティはかなり高い。
プレイ時間は4時間
筆者のプレイ時間は4時間。
ボイスをすべて聞きつつ、メモしていた時間もあるため、スムーズに読み進めればプレイ時間はもう少し短くなるだろう。
選択肢による分岐は1ヶ所のみで、CG回収は難しくない。
パッケージ版紹介
Steam版以外にもパッケージ版が発売されている。
パッケージ版の内容はダウンロードコードと初期設定集となっており、ディスクはない。
初期設定集は20ページでキャラクターの立ち絵(制服・私服)、一部のスチルラフ、キャラクターの初期稿が収録されている。初期イメージと完成イメージを見比べるのも楽しいため、パッケージ版の購入をおすすめしたい。
アクキーが付いたケモ耳パッチDLCもあるよ!
百合漫画と並べても違和感のないパッケージ作りを目指したとのことで、私の愛蔵書と並べてみた。
一見するとゲームのパッケージとは分からないぐらい馴染んでいる。
百合姫作品のなかの一作みたいだね!
総合評価
総評:非常に良い
4/5
『私たちマリアージュ①』は女学院を舞台にしたSF百合ビジュアルノベルだ。
スパイとして潜入した主人公・
会話のなかに自然に盛り込まれたSF設定は興味深く、今度のストーリー展開に期待を抱かせる。
Live2Dによって動くキャラクターとUIは良い試みだが、それ単体というよりはキャラクター付けの一種であり、スパイスとして受け取った。
バトル演出やバックログなど細かいところで気になる部分はあるが、キャラクターと声優のクオリティは高く、百合ゲー好きであればプレイしておきたいタイトルだ。
- 深い愛情が描かれる姉妹百合
- 続きが気になるSFストーリー
- ビジュアルとボイスが最高
- 物足りない群像劇要素
- チープなバトル演出
もともとパッケージ版を予約していたけど、販売店の発送が遅れたので、到着を待てずにSteam版も購入しちゃった。
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