百合ビジュアルノベル『嘘から始まる恋の夏』をリリースしたLYCORISのおふたりにインタビューする本企画。後半戦はネタバレ編として作中のさまざまなシーンにフォーカスを当てて、お話しを伺った。
- Akeo氏:シナリオ担当
- 塩こうじ氏:キャラクターデザイン担当
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「ああ……振られちゃったな」ってボソッとおっしゃってて、すごく思いを込めて演じてくださってたんだなって
――ここからはネタバレありということで、本作のさらに深いお話しを伺います。居酒屋トークばりにざっくばらんな感じでお願いします!
Akeo:はい(笑)。
――私は莉久が好きなんですが、旅行からの告白シーンは心が痛すぎて……。直視できなかったです……(泣)
Akeo:莉久役の藤村鼓乃美さんはあの収録が終わった後、ちょっと魂が抜けてましたからね。印象的だったのが、あのシーンの収録で「ああ……振られちゃったな」ってボソッとおっしゃってて、すごく思いを込めて演じてくださってたんだなって、演技はもちろん、自分はそこにも胸が苦しくなりました。
塩こうじ:私は先にシナリオを読んでるんですけど、実際にゲームになったら、本当に泣いちゃう、こっちが泣いちゃうよって。献身的だし、もうちょっと欲を出してええんやでっていう。
Akeo:そうなんだよね。もっとズルくても許されるはずなんだよね。でも、できないんだよな。莉久はまっすぐだから。薫と栞里がギクシャクしている間に……とか、ズルい大人は考えちゃうけど。
――告白の翌朝、すぐ帰っちゃったり……。
Akeo:逆にあそこに残るほうがツラいですよね。難しいですよね、身の振り方が。
塩こうじ:できるか分からないけど、ファンディスクとか続編とかで伏線みたいなものを活かせれば。
――後輩の女の子ですね。
塩こうじ:そうですね。その伏線を広げられればいいなと。
Akeo:そうだね。ちょっと話は逸れるけど、実は当初の構想では深玲ルートみたいな話があって、薫と深玲が結ばれて、栞里が報われないパターンと栞里と莉久が結ばれていい感じになる案もあったんですけど、ちょっと違うなってことで、今の形になったんです。
――その違和感、分かります。
Akeo:栞里と莉久が結ばれたら幸せになるのかって考えたときに、それはどうなんだろうって思って。栞里のツラいところを莉久がどれぐらい理解してあげられるのか、まだ分からないところがあるのかなとか。
塩こうじ:ズレはどんどん発生していくだろうし、すごく大変になってしまうかも。
Akeo:莉久もたぶんそれを感じていたからこそ、翌朝帰るチケットをあらかじめ取っておいたんだなってところがあるよね。でも告白の瞬間、莉久は間違いなく本気だった。
――しんみりしてきたので、莉久の大好物・ドーナツの話をしましょう!これだけドーナツが出てくる百合ゲームはたぶんないと思います。
Akeo:”DONUTS DAISUKI”が出てくるぐらいの。あれ、びっくりしましたもん。
――知らなかったんですね。
Akeo:私服のデザイン見たら、ドーナツって書いてあって……。
塩こうじ:私服のデザインでワンポイントのマークって困るんですよね。何にしようかって。それならもうドーナツ好きだし、めっちゃ食べてるし、私も柄物とか好きなので、莉久も好きだろうってことでもう入れちゃえ!と。文字はネタですね。下の英語どうしよう……”DONUTS DAISUKI”でいっかみたいな。
Akeo:”LOVE”じゃないところにセンスを感じます。”DAISUKI”ってところ。
一同:(笑)。
深玲ってキャラクターをちゃんと考えたら、やっぱりこれしかないなっていうのが今の形なのかな
――深玲さんも好きなんですよ。魅力的ですよね。めちゃくちゃかっこいいですし。
Akeo:それはうれしいですね。正直に言うと、嫌われてしまうかもしれないと思ってドキドキしてたので。本人も言ってますけど、深玲って本当にズルいところがあるじゃないですか。だから好きになってもらえるのかな?って不安だったんです。
塩こうじ:そうですね。SNSとかだと深玲さん!ってなってる方が結構多い印象だったので、よかったって思いました。
Akeo:深玲はこの作品の裏主人公じゃないですけど、いろいろ背負ってるキャラクターなんです。なので、当初の構想でどうやったら深玲ルートに行くのかなって考えたときにこれは一筋縄じゃ行かないなって。告白シーンで分岐ってありがちなものを考えていたんですけど、それをちゃんとやろうとしたら、冒頭から変えないといけない。
塩こうじ:そうそう、最初から変えないと運命が変わらない。
Akeo:深玲ってキャラクターをちゃんと考えたら、やっぱりこれしかないなっていうのが今の形なのかなって気はしています。
あと、シナリオを書いてるとき、深玲が思いを吐露するところとか本当にツラかった。深玲が親から結婚を求められてとか、百合ゲームとしてどうなの?受け入れてもらえるの?ってところがあったんですよね。
塩こうじ:漫画とか小説だったらあるけど、ゲームではどうなんだろうってのはあったよね。
Akeo:深玲は過去の話もいっぱいあって、ゲーム1本でどれぐらいかけるか分からないけど、そういうのも書きたいなと思いもありますね。最終的には『嘘から始まる恋の夏』をクリアした人がこの作品の特徴ってなんだろうと思い返したら、深玲って存在かもしれない。
塩こうじ:って、また話が長くなっちゃったんですけど……(苦笑)。
Akeo:まだまだイケるよ!電子タバコと紙タバコを吸い分けてる話とか。
塩こうじ:覚悟決めなきゃいけないときは紙タバコみたいな、そういう感じだもんね。
Akeo:だから、最初に「紙のタバコ吸ってきたでしょ」って言われたりとか。
――止まらなそうなので次回に取っておきましょう(笑)。告白→振られるという展開が連続で続くのが堪えました。
Akeo:さっきの話にもつながるんですけど、別のシナリオが作れそうだなっていうのはうっすらと感じていて、莉久に関しては後輩からアタックされてる様子だったり、深玲さんだったら薫と出会う前の話とか、話が広がりそうだなと。
――そのあたりのお話はもっと読みたいですね!
Akeo:本当ですか?そのあたりは書きたいところではありますね。深玲だったら家出した薫を助けるに至った心情とか、元々学校を辞めようと思っていたのはなぜなのかとか設定はありますし。
学校を辞めた後に薫と再会する瞬間は小説で書きましたけど(編注:『エピソード0 恋、降る シナリオブック』収録「再会は透き通るような晴れの日でした」)、それまでの間、どんな思いで過ごしていたのか、朝日が付き合わされてたんだろうなみたいなところは書きたいですね。
塩こうじ:過去の話はゲーム以外、今後の話はゲームでやれたらって思ってるとこはありますね。
Akeo:薫がまだ向き合ってない問題として、お母さんとまだちゃんと話してないとか、DNAがつながっているお父さんって誰なんだろうとか。薫がそういうことを知るのかどうかっていうのはゲームがいいのかなって思ってます。
深玲と薫の出会いとか再会後になにがあったのかは小説とかコミカライズとかそういう媒体がいいのかなって思ったりしています。コミカライズになると、LYCORISだけで実現するのは難しいのでハードルは高いですが。