『Sugar,sugar,sugarcoat』評価・レビュー｜友人から集めた愛を”悪魔に捧げる”百合ノベルゲーム【感想】

『Sugar,sugar,sugarcoat』は恋愛ノベルシミュレーションゲームだ。

主人公のヘレナは悪魔であるマリーに恋してしまう。マリーにハートを捧げるため、ヘレナは友人たちから愛されなければならない。

かわいいビジュアルとは裏腹に、メタ表現を織り交ぜた濃厚なストーリーが展開される。人間の本質に迫るダークな一面を描き、それぞれの愛の形を問いかける。

この記事では、不穏な雰囲気が漂う『Sugar,sugar,sugarcoat』の魅力を紹介する。

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本作には暴力や自死などのテーマも含まれています。本記事内には一部、ネタバレが含まれます。ご注意ください。

愛する悪魔のために友だちから愛を集める

主人公・ヘレナの前に現れたマリーは悪魔だった。魔法をかけられて、マリーを愛してしまったヘレナは悪魔に仕える天使として、忠誠を示すために「ハート」(愛)を集めることになる。

攻略対象は友人のクラリス、サラ、ミシェルだ。

3人のなかから1人を選び、関係を深めながらエンディングに進み、ハートを獲得する。それをマリーに捧げるという流れを繰り返していく。

攻略キャラとは結ばれない！？異色の恋愛ゲーム

普通の恋愛アドベンチャーゲームでは、主人公がキャラクターと関係を深めた末に結ばれることが多い。

しかし、本作ではヘレナがクラリス、サラ、ミシェルに恋することはない。なぜなら、ヘレナが彼女たちを「攻略」しているのはマリーに捧げるハートを集めるためだからだ。

ゲームのなかで、ゲームをプレイしているような仕掛けがあり、フィクションとリアルの境界線があいまいになる。

ゲーム序盤のチュートリアルでは、3人の表面的な魅力が紹介される。この時のキャラ付けは、各ルートの伏線にもなっている。

クラリスは飄々とした振る舞いの裏で、切実に愛を求めている。

サラは誰にでもやさしく、頼られる存在。微笑みのなかにどこか陰がある。

ミシェルは天真爛漫で、一緒にいるだけで明るくなれる。

プレイヤーは会話を通して、3人の内面に迫っていく。最初に抱いたイメージとは違った一面を知り、心を通わせる。最終的には、彼女たちの不器用さが愛おしく思えるようになっていく。

幸せな時間は長くは続かない。ヘレナが友人たちと心を通わせ、ハートを手に入れた瞬間、マリーが現れてハートを回収してしまう。そして、また新たなハート集めがはじまるのだ。

物語が進むにつれて、マリーの本当の気持ちが明らかになると、これまでの印象がガラッと変わる。マリーにハートを捧げる喜びと、友人たちとの親愛が奪われる悲しみ。さまざま感情に心を揺さぶられる。

メタ表現で特殊な攻略方法もあり。攻略ページも参考にしよう

メタ表現を取り入れた本作では、序盤から「システムが破損しました」とメッセージが表示されたり、トゥルーエンドに到達するまでの操作が特殊だったりと、少し悩んでしまうところもある。

クリアできないほど難しいわけではないが、もし行き詰まってしまったら、公式ページにある攻略情報を見ればヒントが得られる。

陰を活かした表情豊かなイラスト、作風にハマっているピコピコ系BGM

キャラクターのイラストはかわいらしい。表情が豊かな立ち絵も良いが、特にスチルは陰の使い方が絶妙だ。ほんの少し陰を動かすことでイラストが動的に見えるし、物語の大切な瞬間を切り取ったようにも感じられる。

シンプルなテキストの後ろに無邪気さやせつなさがにじむイラストが並ぶことで、作品の完成度が高まっている。

BGMはいわゆるピコピコ系サウンドだ。恋愛ゲームには合わないかと思ったが、イラストやUIの雰囲気と驚くほどマッチしている。リアルとフィクションの間を揺れ動くようなファンタジックな楽曲が、メタな表現のある本作の世界観を引き立てている。

総合評価