『推しのラブより恋のラブ』はラブコメ系百合ビジュアルノベルだ。
カフェで偶然出会ったオタクとギャル。オタ女子は押せ押せで迫ってくる年下ギャルから初めは逃げるが、そのまっすぐな愛情に次第にほだされていく。
笑いを盛り込んだドタバタコメディでありつつも、お互いの気持ちを推し量り、距離を縮める2人の姿にホッと心が和む。そんなやさしさを持った作品でもあった。
本記事では『推しのラブより恋のラブ』のあらすじやヒロインを紹介した後、ゲーム内容をレビューしていく。
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あらすじ
あくるは二次元キャラの推し活に夢中だった。
ある日、オタ活仲間の志乃と行ったカフェで強運を持つギャルに出会い、ガチャを引いてもらうと大当たり。推しをお迎えしたあくるは興奮し、画面に向かって「結婚しよ」と口走る。
翌日、仕事を終えたあくるが外に出ると昨日のギャルに突然抱きつかれる。事態が飲み込めず、混乱するあくるにギャルは「なに?フィアンセの顔も忘れたの?」と微笑むのであった。
キャラクター紹介
速星 あくる (はやほし あくる)
ソーシャルゲーム『剣豪商西人折(ケンショー)』のコヘイくんを推すオタク。
推しのためなら重課金もいとわないが、ガチャの引きがとにかく悪い。
帝都麻生ホテルのフロント係として勤務している。
古舘 恋 (ふるたち れん)
金髪ギャル。学生。
友達からも代わりにくじを引いてほしいと頼まれるほど、強運の持ち主。
あくるの家に転がり込み、愛情を全面に出してアピールする。
錦 志乃 (にしき しの)
あくるのオタ活仲間&同僚。帝都麻生ホテルのリネン係。
好きなゲームの二次創作を即売会に出しているサークル主。
あくると恋の関係を見守りつつ、ちょっかいを出して楽しむ。
レビュー
思いやりのあふれる”やさしい”ラブコメ
『推しのラブより恋のラブ』は全体的にコメディタッチ。シナリオは楽しく、プレイヤーは元気をもらえる。
恋は元気いっぱいで底抜けに明るい性格だ。
積極的にあくるにアタックし、素っ気なく扱われても、めげずに「私を見て」と言える真っ直ぐさには好感が持てる。
あくるは恋の強引さに押されて同棲してからも、情熱的に推し活を続ける。
恋への恋愛感情はないが、ちょっとした仕草にドキッとしたり、感情が揺さぶられる瞬間を何度も重ねていく。
作中にはそれぞれが相手の感情を思いやるシーンがある。
恋にとって好きなことがあくるにとっては嫌なことだと気がついたときの恋の苦悩。あることをきっかけにして、恋の存在の大きさに気がつくあくる。
それぞれが相手の気持ちを想像して悩む姿からは、キャラクターのやさしい心に触れられる。
名脇役は、あくるの幼馴染・志乃。
恋の気持ちを知り、わざとあくるとの親密さを恋に見せつけてヤキモチを焼かせたり、あくる攻略へのヒントを与えたりと、無責任に楽しんでいるように見えて、実は2人の心を近づける役割を担っている。
志乃を含めた3人の個性とやさしさによって、思いやりあふれるラブコメに仕上がっている。
一方で物足りない点もあった。
本作は高橋留美子・原作『うる星やつら』のオマージュだ。速星あくる(元ネタ:諸星あたる)といったキャラクター名や押しの強い女性に追いかけ回される設定、トラ柄ビキニなどの衣装からもそれは明らかだ。
王道ラブコメをめざした結果として、ただ恋愛の甘い部分だけを描くだけに留まり、ストーリーに深みが感じられないところはもったいなかった。
『うる星やつら』は強烈なキャラクターがわんさと出てきて、物語をひっかき回すところがおもしろいのよね。『推しラブ』は短い話だからキャラクターも少ないし、話を広げられなかったのね。
気になる?あくるを虜にする推しの男キャラ
『推しのラブより恋のラブ』には男性キャラクターが登場する。
といってもあくるが熱中しているソーシャルゲームのキャラクターとして……。
あくるが推しているのは『ケンショー』に登場する秋山コヘイくん(なんと齢80)。キャラクターボイスも実装されている。
コヘイくん以外にもあくるが過去に推していた男の子キャラたちがあくるに話しかけてくる妄想シーンはある。
百合ゲー愛好家の中には男キャラに強い拒絶反応を示す方もいるが、元カレだとか、恋愛感情の対象ではないため、さほど気にならないだろう。
それでも気になる場合はボイスをオフにするなどして対処したほうが良い。
ナンパ男が登場するシーン(ボイス付き)のほうが気になるかも。
ふんわりとした雰囲気をまとったイラストとさわやかな音楽がかわいさを演出
『推しのラブより恋のラブ』のキャラクターデサインはDSマイル氏。
ふんわりとした雰囲気で描かれたキャラクターたちは魅力的だ。
天真爛漫な恋の笑顔が弾けるシーンやあくるのキリッとした表情がやさしいタッチと淡い彩色で描かれ、本作の持つやさしさを表現したキャラクターデザインとなっている。
イチオシはホテルの制服を着て、お仕事モードのあくる。
鈴湯の透明感のある歌声からはじまるオープニング曲「LOVE EMOTION!」はドタバタ感を反映させたアップテンポなポップソング。
ギターやシンセに耳が行きがちだが、変化に富んだリズムパターンが恋のコロコロ変わる表情を思わせる構成だ。
ギターが弾き倒してるところも聞きポイント!
BGMは「大好きだから」「鼓動を聞いて」などピアノメインの曲が耳に残った。ギャグっぽい曲も下品にならず、きれいにまとめられていた。
メニュー画面の場所は分かりにくいが、システムは過不足なし
『推しのラブより恋のラブ』のシステムは通常のノベルゲームと同様に必要な機能は揃っている。
初期設定ではテキストウィンドウの濃度が薄めで文字が読みにくかったため、少し濃くするのがおすすめだ。
分かりにくかったのが、プレイ中のメニュー画面表示だ。
スキップやオートモード、クイックセーブ・ロードはウィンドウに表示されているが、それ以外のセーブ・ロードやコンフィグは画面右に最小化されており、筆者はマニュアルを確認するまで気がつかなかった。
把握してしまえば、問題ないがウィンドウ自体に含めてもよかったと感じた。
次の選択肢へジャンプがあるともっとよかったかも……。
クリアまでのプレイ時間は3時間、選択肢は少なめ
筆者のプレイ時間は3時間。
選択肢による分岐はあるが、選択肢は少ないため、その時々でセーブしておけば他のエンディングを見るのもかんたんだ。
エクストラモードには以下が収録されており、進捗によって埋まっていく。
- CG鑑賞(18枚+立ち絵2枚&ボイスコメント、アペンドで+6枚、OPムービー)
- 背景鑑賞(10枚)
- BGM鑑賞(11曲)※OP/EDはなし
- シーン鑑賞(アペンドで追加)
Steam版を購入した場合は2人のその後を描いたアペンドパッチを購入することも可能だ。(他PC版の場合は収録済)
やや唐突な終わり方にも感じたため、アペンド込みでも、もう少し2人のその後が描かれているとなお良かった。
総合評価
総評:良い
3/5
『推しのラブより恋のラブ』はやさしさに包まれたラブコメ百合ビジュアルノベルゲームだ。
『うる星やつら』をオマージュした”鬼ごっこ”スタイルの王道ラブコメシナリオは分かりやすく、愛をまっすぐに伝える恋と戸惑いながらも受け止めていくあくるの様子が微笑ましい。
一方で王道ラブコメをめざした結果、ストーリーに深みが生まれなかったのは否めない。
お互いの気持ちを思いやるやさしさも描写されており、一方的に愛を押し付けるだけではなく、双方が理解しようと悩み、努力する様子には心が和んだ。
ふんわりとした雰囲気のキャラクターデザインは作品に馴染んでおり、キャラクターの持つ素直さ、やわらかさを表現していた。
やや唐突なエンディングにも感じたが、気軽にプレイできるラブコメ百合としておすすめできるタイトルだ。
- 明るいラブコメ感
- 思いやりのある心情描写
- やわらかい雰囲気のイラスト
- やや唐突なエンディング
- ストーリーに深みがなく、物足りない
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