『ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士』は百合専門サークルの黒彩黄泉路が手掛けた和風伝奇百合ビジュアルノベル。前編が2015年8月、後編が2016年12月にリリースされている。
京都に暮らす主人公・重瀬漣は幼なじみの東雲と数年ぶりに再会し、彼女の導きによって世界を揺るがす戦いに身を投じることになる。
仲間とともにあやかしと対峙する戦闘パートは熱く、その合間に描かれるそれぞれの彼女とのふれあいには心癒される、コントラストが特徴的な作品だ。
本記事では『ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士』のあらすじ、登場人物を紹介した後、ゲーム内容をレビューしていく。
2012年に世界観を同じくする前日譚『続・日本神話-ねのかみ-』、2013年に『続・日本神話-ねのかみ-幽世編』が発表されたが、その後、作者都合により販売終了した。
あらすじ
2016年、京都。
漣の前に現れた旧友・東雲。
巫女服に身を包んだ東雲はあいさつもそこそこに漣を連れ出し、ポツリと告げる。
「ーーこの街を捨てて、死んで貰うから」
漣は東雲とその仲間たちが暮らす村を訪れる。
東雲たち”宮内機関“から自分たちとともにあやかしから都を守ってほしいと頼まれ、否応なしに戦いと陰謀の渦に巻き込まれていく。
キャラクター紹介(声優)
重瀬 漣 (CV.餅よもぎ※前編/杏花※後編)
女子校2年生。小柄。
神剣の担い手であり、人の気が視えるなど特異な能力を持つ。
猿女 東雲 (CV.そらまめ。)
漣と同い年の幼なじみ。
神剣の担い手だが、まだその力を完全に引き出せてはいない。
猿女 受賣命 (CV.みゅう)
東雲の姉。
代々受け継ぐ特別な力を持ち、聖域に住む。
幼少期に一緒に遊んでいた漣を偏愛している。
媛御子 ルカ (CV.藍沢 夏癒)
中学時代に東雲たちの住む町に引っ越してきた非戦闘員の少女。
東雲と付き合っている。
レビュー
胸が熱くなるバトル!!
『ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士』のストーリーの中心にあるのは戦いだ。幽世から現世に戻りたい邪神とあやかし、それを食い止めようとする人間の姿が描かれる。
東雲たち”都部“の戦力は心もとなく、漣の存在が鍵を握る。しかし、漣は人間とあやかしのどちらかに味方につくわけでもなく、妥協案を探るなど、ストーリーのなかで異分子的な存在だ。予測がつかない漣の行動が物語をひっかきまわしている。
戦闘シーンやその前後ではキャラクターが感じる不安や恐れ、怒りなどの感情が印象的に描かれる。いつもマイペースで何事にも動じない東雲があやかしと対面しただけで体の震えが止まらなくなる。東雲を抱きしめて安心させる漣が頼もしい。
本作では戦う理由を都を守る大義だけでなく、身近な愛する人を守るためとしている。それによって決死の覚悟で戦いに挑む漣や東雲に感情移入し、手に汗を握る戦闘シーンが生み出される。
ここぞのポイントでかかるボーカル曲がアツい!
後編に入ると隠された真実が明かされ、スペクタクルなストーリー構成で一気にプレイしてしまった。
2組の百合ップル、溺愛っぷりがかわいい!
『ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士』では漣と受賣命、東雲とルカの2組の恋愛模様が描かれる。
受賣命は幼い頃の漣を男の子だと思っていたが、女の子だと分かってからも一途に愛を捧げている。漣は受賣命に対する感情に困惑する様子もあるが、一度受け入れてからは愛情を素直に表現している。
東雲とルカはゲーム開始時点ですでに結ばれた状態だ。ルカが東雲を手玉にとってからかう様子がかわいらしく、小悪魔っぽさが魅力だ。
私の推しはルカです!
ここのCG、いいわねっ。
どちらのカップルも後編ではひと波乱あり、それを乗り越えて絆を深めていく少女たちを素直に応援したくなる。
プレイ時間は前後編で14時間、充実のボリューム
筆者のプレイ時間は前編が7.5時間、後編が6.5時間で計14時間。プレイ中はボイスをすべて聞き、選択肢による別ストーリーやおまけシナリオもすべてプレイした。
本編だけでも満足のボリュームだったが、エピローグ的な位置づけのおまけシナリオも含めて、充実した内容だった。
結末は解釈が分かれるため、プレイヤー自身の想像力が試される。
結末、びっくりしたわ……。
後味すっきりとはいかないわね。
総合評価
総評:非常に良い
4/5
『ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士』は和風伝奇百合ビジュアルノベルだ。
幼なじみ東雲に導かれ、人間とあやかしの戦いに身を置いた漣を中心に描かれるストーリーは見せ場も多く、戦闘が物語を熱く彩っている。
2組の百合カップルはどちらもラブラブで見ているだけで幸福感がある。
ウィークポイントとしてはメッセージウインドウ横のメニュー表示が目立ち、気が散った。また、エンディングはすっきり大団円とはいかず解釈が分かれる。
トータルで見れば、ボリュームもあり、エピローグまで楽しめた本作の満足度は高い。
和風伝奇ものに興味のある百合ゲームファンにはぜひプレイしてほしい作品だ。
- 胸が熱くなるストーリー
- ラブラブな百合
- 満足感のあるボリューム
- 少し気が散るメニュー表示
- 解釈の分かれるエンディング
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