大ヒットした『推しのラブより恋のラブ』(以下、推しラブ)のスタッフが再集結し、百合でオメガバース作品を作っちゃった!ということで、2024年2月22日(金)発売予定の『リップ・トリップ~編集長(ボス)はわたしの解熱剤~』の制作陣にインタビューをしてまいります!
今回は、企画とシナリオを担当された、オグリアヤさんにお話を伺います。


『リップ・トリップ~編集長(ボス)はわたしの解熱剤~』企画・シナリオ
『推しのラブより恋のラブ』シリーズ 企画・シナリオ
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百合オメガバース!?「企画」について
―― 今回は企画も担当されたということで、百合でオメガバースを描こうと思ったきっかけなどありますか?
オグリアヤさん(以下、オグリ):もともと『バンドリ!』(編注:BanG Dream!)などの二次創作でオメガバース百合が好きだったのですが、ティーンズラブやボーイズラブ作品で職場が舞台のものがあるのを知り、オメガバース設定による本能的な欲求と職場での自分・相手を考える気持ちからくる葛藤に魅力を感じていました。
自分も何か作品として出したいと考えていたのですが、そのタイミングで古賀プロデューサーと話す機会があり、オメガバースお仕事百合の魅力を語るうちに企画として提案することとなって現在に至ります。
―― 百合でオメガバースを描く上で不安はありませんでしたか?それに対して対策したことや気を付けたことなどはありますか?
オグリ:自分の好きな分野なので、描く上での不安はありませんでした!
ただ、楽しくプレイしてほしいので、受け取る方にとって傷つくような表現は避け、オメガバース設定からくる差別的な表現や暴力表現には気を付けています。
物語上必要な要素は残しつつ、主人公の凛乃がはっきりとNOをつきつけたり周囲からのサポートがあったりといった展開にしました。また、オメガバース=生えているというイメージがある人も多いので、本作品はそうではないと作品紹介にも掲載してもらっています。


―― 大ヒットした「推しラブ」のスタッフが再び集結ということで、どんな思いで制作に参加されましたか?
オグリ:企画を提案したのは自分だったので、最初はあまり集結という意識はなかったです。ですが、今回、主題歌も推しラブと同じ鈴湯さん、よる。さん、ロゴデザインは齋藤さんとのことでどれも素晴らしいクオリティのものだったのでうれしかったです!
特による。さんの書かれた歌詞が自分の作品のイメージとすごく合っていたので、そこにも注目してほしいです。
今作のヒロインたちについて
―― 凛乃と千寿のキャラはどのようにして生まれたのでしょうか?
オグリ:今回、オメガバースという百合では珍しい設定でかつ仕事ものとして設定の情報量が多くなると思ったので、カップリングは誰でもキャラがつかみやすい王道のものにしたいと考えました。
勝気な女子とその女子に冷たく接する美人という、大人百合や少女漫画では王道な設定にしたんですが、意外と年齢は近かったりお互い恋愛感情だけではない親愛があったりとすこしだけ王道から外れているのが個人的に好きなポイントです。
―― オグリさんから見て凛乃はどんな人物ですか?
オグリ:一言でいうと、仕事のできる愛されキャラです。好き嫌いがはっきりとしていて、裏表がないので友人や同僚にいたら頼りになるタイプだと思います。キャラクターデザインでも自分の好きなものを着ていて強い印象となるように露出が多かったり、メッシュを入れていたり、厚底などの強めのパーツのある服にしてもらいました。


プロット段階ではもっとΩの弱さのあるキャラだったんですが、書いているうちにどんどんかわいくてタフなキャラになっていたので楽しかったです。それに合わせて名前も変わったりしました(黒部琉那→北川凛乃→妹熊凛乃……甘めのかわいさのある名前になったと思います!)
―― では、千寿はどんな人物ですか?
オグリ:あまり書くとネタバレになっちゃうので……作中のオメガバース用語集でも触れていますが、αらしくない人だと思います。趣味が陶芸とハーブティーなんですが、陶芸は手の触感を、ハーブティーは香りを楽しむものという本能的な感性で楽しむものでかつ一人でできるものというのが彼女らしくて好きです。


執筆、制作秘話など
―― 凛乃の仕事に取り組む様子が具体的にいきいきと描かれていて、お仕事ものとしても見ごたえがあったのですが、どのような取材をされたのでしょうか?
オグリ:旅行雑誌やWebの記事を読んだりはしましたが、普段から会社員として働いているので仕事の描写には取材というほどの取材はしなかったです。実際にWebメディアで働いていたことがあって、旅行系のメディアにも一時期関わっていたのでその際の経験を参考にしてます。
―― ヒロインたちが持つアイテムが魅力的で、女性のファンの方は実際にモデルになったものがあれば知りたいと思うのですが、よろしければ教えてください。
オグリ:今回は、ほとんどモデルはないです。しいて言えば使っているビジネスバッグは凜乃がSamantha Thavasa、千寿はMOTHERHOUSEっていうくらいかと……(たぶん二人ともそんなにこだわりなく買ってます)。
明確にモデルにしているものでいうと、作中に出てくるフルーツサンドは茅場町にあるイマノフルーツファクトリーを参考にして描写してます。あとは、フェロモンの香りは凛乃はチャイ、千寿はモヒートの香りをイメージしていることとかでしょうか。
――「推しラブ」では物語の舞台が錦糸町でしたが、今回もモデルになった地域はありますか?
オグリ:オフィスは虎ノ門のイメージです。NKパブリッシング(編注:作中で描かれる会社)は数年前に神保町から移転してきて、当時のことは「神保町時代」と呼ばれてたりします。当時は紙の雑誌オンリーだったんですが、本社との連携を強化しWeb事業にも力を入れるために虎ノ門に移転してきた歴史があります。
―――もう一つの舞台として、金沢を選ばれたのはなぜですか?
オグリ:金沢が好きだからが一番大きいです!
物語としては、凛乃の出身地としての適性も考えてます。東京に憧れを感じるぐらいの地方だけどファッションを普段から楽しむことができるくらいには発展している場所(楽しめなかったら凜乃はもっと早くに上京すると思うので……)として石川県を選びました。
また、凜乃が働く編集部のメインユーザー的に女性が単独や複数人の旅行で選びがちな観光地で、かつ衣装差分をつくるのは厳しいので首都圏と温暖さの激しすぎない場所にしています。
―――執筆中の制作秘話、エピソードなどあれば教えてください。
オグリ:オメガバースでは多くの用語や設定が存在すると思うんですが、初見の人でもわかりやすいように設定は絞り込んだためかなり用語や概念を削りました。
オメガバースを普段から読んでいる人からすると、Ωにとって無理やり番にされることの悲壮さやチョーカーによる防衛などの設定が入ってないのはなんで?となるかもしれません。
たとえば、巣作り(ネスティングというΩ特有の習性)も書いたんですが、CGの枚数制限や説明を入れるとテンポが悪くなるという理由で数万字削ってます。今回は推しラブよりもさらに気軽に楽しめる作品を目指したので、そういう部分での難しさがありました。


作品の注目ポイントについて
―― オグリさんの思う『リップ・トリップ~編集長(ボス)はわたしの解熱剤~』のみどころは?
オグリ:千種みのりさんによる色香のある表情でかつ美麗なCGイラストと、稲荷結さん演じる凜乃のとにかくかわいいセリフたち、逢真井もこさん演じる千寿のクールで切羽詰まった表情のある演技がみどころです!
物語的には、凛乃がとにかくかわいい、がんばれ!って応援したくなるところと、千寿さんはもっと器用に生きて!!!って叱咤したくなるところだと思います。仕事を頑張る女性が魅力的に書けていたらうれしいですね。
―― 最後に作品を待つファンの皆様へメッセージをお願いします。
オグリ:この作品をきっかけに仕事ものの百合やオメガバースに魅力を感じたら、ぜひ他の作品にも触れてみてください! 恋愛や仕事の楽しい部分とつらい部分を詰め込んだ作品なので、すこしでも胸がぎゅっとなるような切なさやうれしさを感じてもらえるとうれしいです。
―― ありがとうございました!!
制作の裏側を垣間見ると、また違ったゲームのおもしろさが見えてきます。
2024年2月22日(金)発売予定の『リップ・トリップ~編集長(ボス)はわたしの解熱剤~』
ぜひ、プレイしてみてくださいね!
文責・真鶴コウ
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