百合ゲームクリエイターが振り返る2023年

2023年は『エヴァーメイデン ～堕落の園の乙女たち～』の家庭用ゲーム機への移植や『アカイイト』『アオイシロ』のHDリマスターが発売されるなど、名作が気軽に遊べるようになった。

完全新作の百合ゲームも発売され、『嘘から始まる恋の夏』や『センチメンタルデスループ』が話題になったことはまだ記憶に新しい。

2024年には『リップ・トリップ～編集長(ボス)はわたしの解熱剤～』の発売が決定しており、来年の百合ゲーム界の動きも楽しみだ。

ゆりりかるでは「百合ゲームクリエイターが振り返る2023年」と題して、百合ゲームを制作しているメーカーや関連するクリエイターの方々に以下の質問を行った。

本記事では、みなさまから頂いた回答を紹介する。

掲載順はメーカー名(サークル名)五十音順、お名前五十音順です(敬称略)。

黒彩黄泉路

ーー2023年にご自身が関わった百合ゲーム関連作品を振り返って頂けますか？(印象深かったタイトル・エピソードなど)※制作中を含む

滝井：2022年に『私たちマリアージュ①』を発売し、今年その2作目を開発しております。

百合的には片思いがテーマとなる2作目は、1作目とはゲームとしてのアプローチも変えるために熟考しながらゲームを組み立てています。

そんなわたマリはご参加頂いているクリエイターの数が多いのも特徴ですが、今年は、皆さんご存じの百合漫画作家さん達ともコンタクトを取ることとなりました。

また、それとは全く別の業界の方とも打ち合わせする機会があって、来年それらの成果をお見せ出来そうです。

ーー2023年に遊んだゲームのなかで、最も楽しかった作品はありますか？

滝井：今年、なかなか時間が取れなくて夏前に『ENDER LILIES』という横スクロールアクションをSteamで遊んだのみですが、動的なゲームも楽しいなぁと思いながらプレイしていました。

美術設定からストーリー、サウンドまで儚くてポストアポカリプスものとしてすごく秀逸で、アクションも難しいながらに骨太で楽しめました。

ーー2023年に触れた百合コンテンツのなかで、印象的だった作品を教えてください(漫画・映画・小説・音声作品などのエンタメ)。

滝井：すごく衝撃的だったのが、アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』です。バンドリを知ってても知らなくても楽しめる作品で、5人の女の子達がバンドを組むまでのメンバー達の軌跡を描く……とかヌルい内容ではなく。綾奈ゆにこさんがシリーズ構成を手がける、恋愛という単語を全てバンドに置き換えただけの、バンドメンバー内外総みだれでドロッドロの愛憎劇を繰り広げる百合アニメでした。

嘘、片思い、立場の違いからの失恋、拒絶、確執、元カノへの未練。『恋愛』という表現を使わず、バンドを恋愛のメタファーとしてここまで負の感情を際立たせた多角形百合って作れるものなんだ。と震えました。バンド物としてもおもしろいし、百合の概念が変わるので知らない人もみて！(百合ヲタ特有の長文)

ーー最近気になっている(注目している)人、コンテンツはありますか？

滝井：漠然としたところにはなるのですが、AIです。

清濁含め、もう各業界ルールや議論が追いつかない勢いで進化していってるので、これから何が出来るようになって、世界がどうなっていくのかが気になります。

AIが人間を超えるというところは部分的に増えてきていて、シンギュラリティとよばれるAIが人を超える現象が起きるのも近いなって思わせてくれます。

ーー2024年の抱負をお願いします。

滝井：新作百合ゲーム出ます。出しますじゃなくて、出ます！

今年はずっとプロデューサー、ディレクターとして対応の年となってしまい、地下に潜ることが多かったのですが、来年はようやく成果発表できそうなので、開発頑張ります。

初出しになるのですが、いよいよ新キャラの素材なども上がり始めてきました。

こちらは初出しの画像。

このふたりは元は百合オンリーで出した社会人ものの短編百合小説のキャラで、教師とその元カノです。今作の恋にまつわるテーマにも関わってくるところなので、短編小説の内容も再構成してゲームに組み込みます。

長くなりましたが、来年、個人制作の域を超えた新しい試みを発表していくのでお楽しみに！

SukeraSparo / SukeraSomero

ーー2023年にご自身が関わった百合ゲーム関連作品を振り返って頂けますか？(印象深かったタイトル・エピソードなど)※制作中を含む

古賀：『ことのはレルナード』

皆さまのお陰でクラウドファンディングも成功し、ご褒美シナリオが追加されたことで異世界語学アプリに無事百合ゲームの要素が追加されました！※その影響もあり制作が遅延しており大変申し訳ありません。期待してお待ちください。

『リップ・トリップ～編集長(ボス)はわたしの解熱剤～』

オメガバースは長年気になっていた題材なので、百合ユーザーにどのように受け入れられるか今から楽しみです。※両性具有の表現などはなく安心してお楽しみいただける作品となっております。2024年2月22日発売です。よろしくお願いします。

ーー2023年に遊んだゲームのなかで、最も楽しかった作品はありますか？

古賀：『メグとばけもの』

プレイしていると優しい気持ちになれる作品です。音楽も最高！！

ーー2023年に触れた百合コンテンツのなかで、印象的だった作品を教えてください(漫画・映画・小説・音声作品などのエンタメ)。

古賀：『さあやとこはる～foreverandever 』百合ピンク映画

ダンゴムシ先生を心の師匠としてついていきたいと思います。

ーー最近気になっている(注目している)人、コンテンツはありますか？

古賀：つらい記憶のフラッシュバックは『テトリス』をやると減る、研究。最近ついつい『メイドインワリオ』に逃げてるので注意しないと。

ーー2024年の抱負をお願いします。

古賀：百合ゲームも百合音声も続けられるように頑張ります。

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ーー2023年にご自身が関わった百合ゲーム関連作品を振り返って頂けますか？(印象深かったタイトル・エピソードなど)※制作中を含む

SAMU：『リップ・トリップ～編集長(ボス)はわたしの解熱剤～』(SukeraSomero)

ここ最近は音声作品メインで制作をしていて、久しぶりのイチからのゲーム開発を行っております。ディレクターという立場でゲームに関わったのは推しラブ(編注：推しのラブより恋のラブ)からでしたが、企画途中からでしたので本当にゼロからのディレクションは今作がはじめてです。その為一つ一つが大変でした。

また音声作品を製作しながらの作業でもあり、頭の切り替えが特に大変でした。

ーー2023年に遊んだゲームのなかで、最も楽しかった作品はありますか？

SAMU：『ウーマンコミュニケーション』(げーむくりえいたーねこ)

今年一番印象に残って来年以降にも影響が出るだろう作品です。下品ではあるが、入り口がとにかくキャッチーで冗談で遊んでみようとすら思える間口の広さがあります。プレイ中は苦笑いも含めとにかく笑顔にさせてくれる作品ではありました。

ですが、出口の作り方。作品の根幹のアイディアがとにかく優秀で圧倒されました。鳥肌が立ち、膝を叩き、悔しいずるいと叫んでしまいました。

アイディアとしては探せば近似の作品、特に小説とかは有るでしょう。ただ酷く難しい物になってしまうんじゃないかと思います。こんなにもキャッチーに描いた作品は初めて触れました。非常に楽しい体験でした。

この文章には無意識風紀違反はございません。多分。